| タイトル | ウオの目くん(ウオの目君) |
|---|---|
| 著者 | 山野一 |
| ジャンル | ギャグ・コメディ / ちょっとエッチな短編集 |
| 主人公 | 魚の目鯖男(うおのめ・さばお)、27歳、サラリーマン |
| 紙版単行本 | SPコミックス(リイド社)全4巻→後に青林堂版でも刊行 絶版 |
| 電子書籍版 | リイド社 全2巻(Kindle) 2013年11月22日発売 各396〜440pt |
| 1巻の収録話数 | 22話(ブックライブ表記) |
| 山野一作品での位置づけ | 鬼畜系単行本群の間に発表された異色のギャグ路線 |
| 現在の入手状況 | 電子書籍(Kindle・ブックライブ等)で入手可。紙版は絶版 |

「魚の目」という苗字と「鯖男」という名前を合わせた、山野一らしい造語的なネーミングの主人公。外見や美的感覚が「変」と周囲から言われながら、なぜか女性が寄り集まってくるという構造のブラックコメディが展開されます。純情さと小心者という相反する特徴が同居しており、山野一の鬼畜系主人公と異なり「社会のどん底にいる敗者」ではなく「底辺のサラリーマン」という設定が、本シリーズのライトな雰囲気を作り出しています。
「魚の目鯖男」というキャラクター名は、山野一の他作品に登場するキャラクターと比較すると明らかに異質です。『四丁目の夕日』の別所たけし、『どぶさらい劇場』の葦屋エリ子といった山野一の主人公たちは、名前だけでも「普通の日本人」として設定されています。それに対して「魚の目鯖男」という名前は、言葉遊び的・ナンセンス的な性格を持っており、これが本作の「ギャグ路線」という立ち位置を端的に示しています。
また「鯖男(さばお)27歳」という設定は、当時(1990年代前半ごろの連載)の山野一自身が30歳前後だったことと対応しており、鬼畜系の重厚な作品群とは別に、より身近な日常的な題材でシリーズを展開した時期の作品です。
山野一の単行本群を発行順に並べると、本作の特異性が際立ちます。
Wikipediaの山野一のページでは、鬼畜系短編や長編の間に『ウオの目くん』が全4巻として存在しています。これは山野一が鬼畜系以外のギャグ・エロコメ路線でも相当量の作品を発表していたことを示しています。山野一の活動の場が1980年代後半から複数の成人誌(『漫画パチンカー』『リイドコミック』等の一般向け青年誌も含む)に広がる中で、媒体ごとに作風を使い分けていたことがわかります。
山野一のWikipediaには、鬼畜系作品の掲載媒体(ガロ、漫画スカット、コミックスコラ等)と並んで、一般向け青年誌として「リイドコミック」(リイド社)が明記されています。『ウオの目くん』の電子書籍版がリイド社から刊行されていること、またSPコミックス(リイド社のレーベル)のISBNが確認されることから、本作の連載誌は「リイドコミック」であった可能性が高いと考えられます。SPコミックスはリイド社が少年・青年向けに展開していたコミックスのレーベルで、『ゴルゴ13』等でも知られます。
同時期に山野一は『コミックスコラ』で『どぶさらい劇場』を連載しながら(1993〜94年)、ギャグ路線の『ウオの目くん』も並行して発表していたと考えられます。山野一がインタビューで「自分が面白いと思う感覚に忠実である事に微塵の揺らぎも無い」(大塚恭司評より)と評されていたことを踏まえると、鬼畜系とギャグ系の両方が「山野一の好奇心の正直な表れ」という点で共通しています。
本作のジャンルは「ギャグ・コメディ」ですが、山野一のギャグが他の一般的なギャグ漫画と異なる点として、以下が挙げられます。
「なぜか女性が群がる鯖男」という設定のコメディは、表面上はモテ系ラブコメに見えますが、山野一の描く女性・男性関係は常に何らかの不条理や歪みを内包しています。「美意識が変」「意外と小心者」という設定が示す通り、鯖男は「普通の意味でモテる男」ではなく、何か奇妙な引力を持った存在として描かれています。この奇妙さは、山野一が鬼畜系で描いてきた「普通の社会から外れた存在への着目」と根を同じくしています。
ブックライブの1巻には22話が収録されており、1話あたりは非常に短い1〜数ページ単位の作品です。これは山野一が1989年の『貧困魔境伝ヒヤパカ』で完成させた「短編集としての構造」をギャグ路線で応用したもので、各話が独立した小品として機能します。山野一の短編は常に「起承転結が常に下方向に向かう」という特徴を持っていましたが、本作ではその「落下する結末」がブラックユーモアとして処理されている点が鬼畜系との違いです。
ブックライブの1巻の各話タイトル・概要として確認できるエピソードをいくつか挙げます。「百合子さんと入った常識ではかり知れない何かのあるお店で、二人は涅槃の境地へ!?(あなたの知らない世界)」「魚の目鯖男(27)をめぐり、女性がバトル!美女がふたり、あんなやつのためにばかげているのだが…(正月早々)」——こうした各話の設定から、本作が「鯖男の周囲で起こる不条理な出来事のオムニバス」という形式であることがわかります。「涅槃の境地」「あんなやつのために」といった言葉の選び方に、山野一特有の不条理感覚が滲んでいます。
本作は山野一の単行本の中でも比較的入手しやすいポジションにあります。鬼畜系単行本群が軒並み絶版・電子書籍化なしである中、本作は電子書籍で現在も流通しています。
- 山野一の異色ギャグ・コメディ路線短編集。主人公は「魚の目鯖男(うおのめ・さばお)」27歳サラリーマン
- キャッチコピー:「美意識が変」「純情ではある」「意外と小心者」「なぜか女性が群がる」
- 紙版:リイド社SPコミックス全4巻(絶版)/青林堂版全4巻(絶版)
- 電子書籍版:リイド社 全2巻(2013年11月22日) Kindle・ブックライブ等で現在配信中
- 1巻に22話の短編を収録。1話ごとに独立したオムニバス形式
- 山野一の単行本の中で『四丁目の夕日』に次いで電子書籍で入手しやすい作品
- 鬼畜系単行本群と並行して発表された作品であり、山野一がギャグ・エロコメ路線でも量産していたことを示す記録
- 鬼畜系作品が苦手な読者や、山野一を初めて読む方の入口として推薦しやすい作品

参考・出典:山野一 – Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/山野一)/ブックライブ「ウオの目くん」(https://booklive.jp/product/index/title_id/231167/vol_no/001)/ブクログ 山野一おすすめランキング(https://booklog.jp/author/山野一)
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