TVアニメ『チェンソーマン』キービジュアル ©藤本タツキ/集英社・MAPPA
3月11日の深夜0時、毎週水曜日恒例の更新で第231話が配信されると同時に、最後のページに走った一文——「次回最終回 3月25日(水)配信予定」。前置きも、単行本完結記念の特設ページも、予告も何もなし。完全に唐突な形での完結発表は、深夜にもかかわらず瞬く間にSNSを席巻しました。
XではトレンドWW1位に「チェンソーマン」がランクイン(3月11日午前1時ごろ)。完結の発表と同時に少年ジャンプ+では第二部49話分を無料で読めるキャンペーンが開始されましたが、それすらも「幕引きへの道標」のように映り、余計に実感を際立たせました。
最終話:第232話(第231話まで配信済み) / 最終回配信:2026年3月25日(水)
完結記念無料公開:第二部49話分(2026年4月8日まで)
特に問題視されているのは、「物語が全然畳まれていない」という点です。主人公デンジ・三鷹アサ・ヨル(戦争の悪魔)の関係に決着がついていないのはもちろん、吉田ヒロフミの正体、「死の悪魔」「飢餓の悪魔」の動向、岸辺やクァンシ・コベニ弟といった第一部から続くキャラクターの行方も、一切の言及がないまま最終回を迎えようとしているのです。
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「打ち切り」という言葉が飛び交っていますが、正確には少年ジャンプ+は週刊少年ジャンプと異なりアンケート制度による打ち切りシステムが存在しません。ジャンプ+は作家の創作意欲とプラットフォームの双方向合意によって連載が続くWEBマンガ誌であり、編集部が一方的に終了を命じる構造とは異なります。
つまり、厳密な意味での「打ち切り」ではないとする見方が有力です。ただし「自らの意志で完璧に畳んだ完結」とも言いにくい——この中間地帯にこそ、今回の議論の核心があります。
- 伏線が大量に未回収のまま
- 第231話までヨルとの決着すら未決
- 告知が「次回」という直前すぎるタイミング
- 第二部の売上が第一部を大きく下回る傾向
- 読者離れと隔週連載化という環境の変化
- ジャンプ+にアンケート打ち切りは存在しない
- 第一部も急展開で幕引き——藤本タツキの作風
- 映画「レゼ篇」・刺客篇と連動した構想の可能性
- 「第三部」への布石として描かれた可能性
- 過去作『ファイアパンチ』も独自の幕引きで高評価
実際のところ、「藤本タツキ先生の作品は常に読者の予想を裏切る」という評価は根強く、「残り1話残っている状態で批判するのは早計」「最終回を見てから判断すべき」という冷静な意見も多く見られます。第一部も第97話あたりから急加速して有終の美を飾っており、最終回1話で一気に収束する可能性を信じるファンは少なくありません。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』キービジュアル ©藤本タツキ/集英社・MAPPA
Yahoo!ニュースのコメント欄、Xのタイムライン、各種掲示板には、完結発表を受けた多様な声が飛び交いました。批判・擁護・困惑——ファンの温度はバラバラです。以下に代表的なコメントをまとめました(すべて匿名)。
- 読者コメント / 匿名 「次回最終回とか信じられない……もちろん3部あるよね?2部が完結なんだよね?チェンソーマン自体が終わるわけじゃないよね?」
- 読者コメント / 匿名 「唐突な展開でどうなるんや。チェンソーマンの更新を楽しみに生きてきたから、完結したらどう生きれば良いんだ」
- 読者コメント / 匿名 「吉田ヒロフミは何だったの、委員長とコベニ弟は何だったの、死の悪魔と飢餓の悪魔何だったの、アサヨル何だったの、クァンシは?岸田どこ行った?2部何だったんだーーー」
- 読者コメント / 匿名 「正直一部を読んでたから続けて読んでたけど第二部は面白くはなかった。2部はデンジの望んだ普通の生活に対する内面描写がメインなので一部のようなのを期待してるとつまらない。今週は突然の展開すぎて話飛ばしたかと思って前の話振り返った」
- 読者コメント / 匿名 「2部になって急に中身が無いただのスケベキャラになってしまったのが残念。1部では自分を抑制できる強さも持っていたはず。2部で急にキャラ崩壊してしまった」
- 読者コメント / 匿名 「無駄にヨルとの戦闘長引かせといて収集つけずに次回最終回は流石に驚いた。これ2部で完結するなら推しの子以上の最悪の完結のさせ方でしょ。いつ面白くなるんだろうって辛抱強く追ってたらいつのまにか最終回ですか…」
- 読者コメント / 匿名 「2部は何故つまらないのか、龍幸伸が抜けて画力が下がった上にWEBで甘やかされて展開が緩んでるから。編集部も『龍が抜けたらダメだろうな』ってわかってたからジャンプラに島流ししたんだろうね」
- 読者コメント / 匿名 「タツキ先生には我々には予想も付かない壮大な計画がおありになるのだろう…残り一話残ってる状態で批判すると火傷しかねん」
- 読者コメント / 匿名 「2部はデンジが鬱々として主体性がない受動的な展開が辛かった。でもそれが逆に言えば藤本タツキらしいともいえる。短編集のクオリティを見るに、一旦仕切り直した方が飛び切りおもろい話を描いてくれると思う」
- 読者コメント / 匿名 「最終回=2部の最終回で、そこから3部が始まる!みたいな展開にしてほしい。チェンソーマンの存在が消えたからチェンソーマンは完結で、その続きを描いた新連載を待ってる」
- 読者コメント / 匿名 「第三部はないんじゃないかな。直近は展開がコロコロ変わったかと思えばぐだぐだになったりで風呂敷の畳み方に苦労してるように見えた。新編があるとしてもだいぶ間が空く気がする」
多くの読者が感じる「第一部は面白かったのに」という感覚。この乖離はどこから来ているのか、整理してみましょう。
第一部「公安編」は、底辺からのし上がろうとするデンジの欲求と衝動がドライバーとなって物語が高速で回転していました。チェンソーマンとして覚醒し、マキマという圧倒的な支配者に翻弄されながらも突き進む直情的な主人公の姿は、王道少年漫画の文法に則りつつも独自の過激さで多くの読者を掴みました。
一方、第二部「学園編」の中心に据えられたのは、自意識に囚われた女子高生・三鷹アサです。不器用で内省的で、承認欲求と孤独の間で揺れ動く彼女の心理描写は、デンジの衝動性とは真逆の「静的な物語」として機能しました。さらにデンジ自身も、第一部のような「夢に向かって突き進む少年」から、ナユタを養うために正体を隠し続ける「くすぶり続ける青年」へと変貌。この変化が、第一部からのファンに大きな違和感を与えました。
| 第一部「公安編」 | 第二部「学園編」 | |
|---|---|---|
| 主人公の軸 | 欲求・衝動・直情 | 内省・自意識・承認欲求 |
| 物語の速度 | 高速・怒涛の展開 | 緩やか・心理描写重視 |
| ヴィラン | マキマという圧倒的存在 | 戦争の悪魔(アサの内部) |
| 掲載誌 | 週刊少年ジャンプ | 少年ジャンプ+(WEB・隔週) |
| コミックス発行 | 1〜11巻 | 12〜23巻(以降) |
また連載の舞台が週刊少年ジャンプからジャンプ+(WEB)に移ったことで、隔週連載となりました。掲載ペースが落ちたことでテンポの悪さが強調され、読者の熱量が維持しにくい環境になったことも指摘されています。
TVアニメ(第一部)
劇場版 レゼ篇
第二部に対する批判の中でも、「作画が劣化した」という指摘は特に根強いものがあります。その背景として繰り返し言及されるのが、龍幸伸氏(現『ダンダダン』作者)のアシスタント離脱です。
龍幸伸氏は、藤本タツキが第一部を連載していた時期のメインアシスタントとして知られており、藤本氏自身もSNSで「少年漫画でトップクラスに絵が上手い」と評するほど高く評価していました。背景の緻密さ、建物の立体感、バトルシーンの構図——「田中脊髄剣」のような見開きを支えた圧倒的な作画は、その多くが龍氏の手によるものと言われています。
龍氏が2021年から『ダンダダン』の連載を開始し、藤本作品の現場を離れると、第二部に入ってから「線がスカスカ」「背景の書き込みが減った」「バトルシーンのスピード感がない」という声が急増しました。第一部を読み返すと、背景のタッチが現在の『ダンダダン』と酷似していることに気づく読者も多く、「第一部の絵の強さは龍幸伸あってこそだった」という論評は今も根強く残っています。
ただし一方で、「作画の変化≠作品の質の低下」という見方もあります。第二部は心理描写に重点を置いた構成上、派手なバトルシーンが少なく、それ自体が「絵の迫力を感じにくい」印象につながっているとも考えられます。また第二部の序盤は「比較的作画が安定していた」という意見もあり、すべてが龍氏の離脱に帰着できるわけではないでしょう。
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「第一部こそが異例で、第二部が藤本タツキの本来の作風に近い」という見方は、作品を深く追い続けたファンの間でも広く共有されています。
デビュー作『ファイアパンチ』は商業的な成功こそ第一部より小規模でしたが、「映画」「演技」「自己と他者の境界」といった高度なテーマをグロテスクなバイオレンスと組み合わせた独自の作家性で根強い支持を集めました。そして短編集に収録された諸作や『ルックバック』は、内省的でアート色の強い作品群として高く評価されています。
この視点から見ると、第二部「学園編」が心理描写と「普通の生活」の虚無感に焦点を当てた作品であることは、藤本タツキが本来目指してきた作家性への回帰と捉えることができます。ただし、その「回帰」が週刊少年ジャンプ由来の大量のファンを抱えた連載作品として行われたことが、期待と現実の大きなギャップを生み出した——そう整理するのが最も正確かもしれません。
読者の一人はこう表現しています。「本来はキリのいいところで大爆発させて終わりたいタイプ。一本の映画を撮るような作家性がある。残念ではあるけれど、一旦仕切り直した方が、きっと飛び切りおもろい話を描いてくれると思う」。
現時点で、第三部に関する公式な発表は一切ありません。ただし、チェンソーマンをめぐるメディアミックスはむしろ今が最も充実した時期にあります。
| 劇場版 レゼ篇 | 2025年9月公開。2026年3月8日時点で興収107.1億円を記録(興行通信社調べ) |
|---|---|
| アニメ 刺客篇 | 制作決定済み(放送時期未定)。劇場版『レゼ篇』の続編にあたる |
| TVアニメ第1期 | MAPPA制作。2022年10月〜12月放送 |
| コミックス累計 | 3,500万部超(2026年3月時点) |
刺客篇 ティザービジュアル
刺客篇 ティザーPVサムネイル
アニメ『チェンソーマン 刺客篇』キービジュアル ©藤本タツキ/集英社・MAPPA
アニメ「刺客篇」が残っている以上、作品世界は続きます。漫画の第三部という形を取らないまでも、新たな読み切りや別媒体での展開は十分に考えられます。また藤本タツキ氏はルックバックや各種短編など、「チェンソーマン以外の作家活動」でも高い評価を獲得しており、次の漫画作品が何であれ、高い注目を集めることは間違いないでしょう。
Xでは「第三部への期待」と「もう続けなくていい」という声が拮抗しており、ファンの間でも意見は真っ二つです。しかしいずれにせよ、3月25日の最終回を見届けるまでは判断できない——それが現時点での最も誠実な結論です。
少年ジャンプ+で第二部を無料で読む(〜4月8日まで) →- 第二部の完結は「打ち切り」ではなくジャンプ+の仕様上作者・編集部の合意によるものとみられるが、伏線未回収の多さから批判が噴出
- 第二部は「心理描写重視・デンジが受動的」と第一部との温度差がファン離れを招いた
- メインアシスタント・龍幸伸氏(ダンダダン作者)の独立が、第二部の作画クオリティ低下の一因と広く指摘されている
- 一方「第二部こそ藤本タツキの本来の作家性」という見方もあり、評価は真っ二つ
- 最終回は2026年3月25日(水)配信。アニメ「刺客篇」制作決定済みで、作品世界は続く
- 第三部の公式発表はなし。第二部49話は4月8日まで無料公開中


